親の介護が必要になったとき、「介護費用は親の貯金から払えばいい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
実際、親自身に預貯金や年金があれば、介護施設の入居費用や毎月の利用料、医療費などを親の財産から支払うことは一般的です。
しかし、ここで注意したいのが親が認知症になった場合の財産管理です。
認知症が進み、本人が契約内容を十分に理解したり意思表示したりすることが難しくなると、家族であっても自由に親の預金を動かしたり、不動産を売却したりできないケースがあります。
「親の介護費用なのだから、親の貯金を使えば問題ない」と考えていたのに、いざ必要になったときに手続きを進められないという事態は避けたいところです。
この記事では、親の介護費用を親の貯金から支払う場合の考え方や、認知症になる前に確認しておきたい財産管理についてわかりやすく解説します。
親の介護費用は親の貯金から払ってもいい?
基本的には、親本人の介護に必要なお金を親自身の預貯金や年金から支払うことは可能です。
介護が必要になると、次のような費用が発生する可能性があります。
- 介護施設の入居一時金
- 老人ホームや介護施設の月額利用料
- 訪問介護やデイサービスの自己負担額
- 医療費や薬代
- 介護用品やおむつ代
- 自宅のバリアフリー工事費
- 通院や介護のための交通費
介護期間が長くなれば、必要な金額も大きくなる可能性があります。
そのため、子どもが自分たちの生活費から介護費用を負担するのではなく、まずは親自身の財産を介護や生活のために活用するという考え方は自然です。
ただし問題になるのが、親本人が財産を管理できなくなった場合です。
認知症になると親の貯金を自由に使えなくなることがある
「親の銀行口座のキャッシュカードと暗証番号を知っているから大丈夫」と思っている方もいるかもしれません。
しかし、預金口座はあくまでも親本人の財産です。
金融機関で本人の意思確認が必要となる手続きでは、認知症などにより本人の判断能力が低下していると、家族であっても希望する手続きを進められない可能性があります。
特にまとまった金額の払い戻しや定期預金の解約などは注意が必要です。
介護費用として使う予定だったお金が口座に十分残っていたとしても、必要なタイミングで自由に動かせるとは限りません。
実家を売って介護費用にする場合も注意
もう一つ大きな問題になるのが親名義の不動産です。
たとえば、親が老人ホームへ入居することになり、
「誰も住まなくなる実家を売却して、そのお金を老人ホームの費用に充てよう」
と考える家庭もあるでしょう。
しかし、不動産の売却には所有者本人の意思確認が必要です。
認知症が進み、売却について本人が十分に判断できない状態になると、子どもだからといって代わりに自由に売却できるわけではありません。
実家という大きな資産を持っているにもかかわらず、それを介護費用として活用しにくくなる可能性があります。
認知症になってから考えればいい、では遅い場合も
認知症対策で重要なのは、親が元気で判断能力があるうちに財産管理について話し合っておくことです。
認知症になったあとに慌てて対策を考えようとしても、本人の判断能力の状態によっては利用できる方法が限られる可能性があります。
そのため、まだ介護が必要ではない段階でも、次のようなことを家族で確認しておくとよいでしょう。
- 親にどれくらい預貯金があるのか
- どの銀行に口座を持っているのか
- 年金収入はいくらあるのか
- 生命保険などに加入しているか
- 自宅や土地などの不動産を所有しているか
- 介護が必要になったとき自宅で暮らしたいのか
- 施設に入る場合、実家をどうするのか
こうした情報を事前に共有しておくだけでも、突然介護が必要になったときの負担を減らしやすくなります。
家族信託という財産管理の方法もある
認知症になる前の財産管理方法の一つとして知られているのが家族信託です。
家族信託とは、財産を持つ親などが、信頼できる家族に財産の管理・運用などを託す仕組みです。
たとえば、親が元気なうちに家族信託の契約を行い、子どもに財産管理を任せる仕組みを整えておくことで、将来親の判断能力が低下した場合でも、信託契約で定めた範囲内で財産を管理できる可能性があります。
そのため、
- 親の介護費用を親の財産から支払いたい
- 将来、実家を売却して施設費用に充てる可能性がある
- 認知症になったあとの財産管理が心配
- 子どもが親の代わりに財産管理を行えるよう準備したい
という家庭では、選択肢の一つとして検討できます。
「うちも家族信託が必要?」と思ったら
家族信託は、すべての家庭に必要な制度というわけではありません。
親の財産額や不動産の有無、家族構成、将来どのように介護を行うのかなどによって、適した対策は変わります。
特に、
- 親が高齢になってきた
- 親名義の実家がある
- 預貯金を将来の介護費用に使いたい
- 老人ホーム入居後に実家を売る可能性がある
- 認知症による資産凍結が心配
という場合は、親が元気なうちに一度確認しておくと安心です。
家族信託の「おやとこ」で相談する方法も
「家族信託について調べても難しくてよくわからない」
「うちの親の場合、本当に対策が必要なの?」
「実家と預金があるけれど、何から準備すればいい?」
このように感じている方は、家族だけで判断せず、家族信託を扱う専門サービスへ相談する方法もあります。
家族信託の「おやとこ」では、認知症による資産凍結対策や家族信託について相談できます。
「家族信託を利用すると決めているわけではない」という段階でも、まずは自分たちの家庭にどのような対策が必要なのか確認してみるとよいでしょう。
成年後見制度という選択肢もある
認知症などによって判断能力が低下した場合の財産管理には、家族信託だけでなく成年後見制度という仕組みもあります。
成年後見制度では、本人の判断能力が不十分になった際に、成年後見人などが本人の財産管理や契約手続きなどを支援します。
家族信託と成年後見制度では、利用するタイミングや目的、財産管理の方法などが異なります。
どちらが適しているかは、親の状況や家族構成、所有している財産などによって変わるため、一つの制度だけで判断しないことも大切です。
親が元気なうちに話し合っておきたいこと
財産の話は、親子であっても切り出しにくいものです。
しかし、認知症や介護が必要になるタイミングを正確に予測することはできません。
いきなり「財産はいくらあるの?」と聞くのではなく、
「将来もし介護が必要になったら、家で暮らしたい?それとも施設を考えている?」
といった話から始めるのもよいでしょう。
そのうえで、
- 介護が必要になったらどこで暮らしたいか
- 介護費用をどの財産から支払うか
- 実家を残したいのか売却してもよいのか
- 預貯金を誰が管理するのか
- 誰に財産管理を任せたいのか
といったことを少しずつ話し合っておくことが大切です。
相続のためだけではなく、親自身が将来困らないための準備として考えてみましょう。
まとめ|介護が始まる前に親の財産管理を考えておこう
親の介護費用は、親自身の預貯金や年金などから支払うことができます。
しかし、認知症などによって親の判断能力が低下すると、預金の手続きや不動産の売却などが思うように進められなくなる可能性があります。
「親には貯金があるから介護費用は大丈夫」と考えるだけではなく、その財産を必要になったときにどのように管理・活用するのかまで考えておくことが重要です。
大切なのは、介護が始まってから考えるのではなく、親が元気なうちに「介護費用をどのように準備し、財産を誰が管理するのか」を家族で話し合っておくことです。
家族信託も、そのための選択肢の一つです。
親が高齢になってきた、実家やまとまった預貯金がある、将来の介護費用が心配という場合は、早めに情報収集を始めてみましょう。


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