「葬儀費用をできるだけ抑えたい」「市役所に相談すれば安く葬儀ができると聞いた」という方が検討する制度のひとつが、市民葬です。
市民葬は、自治体が市民向けに用意している葬儀制度の総称です。自治体によっては「区民葬」「規格葬儀」「市民葬儀」など、異なる名称が使われています。
一般的な葬儀よりも料金やサービス内容が分かりやすい一方で、すべての自治体に制度があるわけではなく、追加費用が発生することもあります。
この記事では、市民葬の仕組みや利用条件、費用に含まれるもの、メリット・デメリット、申し込み方法を分かりやすく解説します。
市民葬とは?
市民葬とは、自治体と指定葬儀社などが連携し、市民が一定の内容・料金で葬儀を行えるようにした制度です。
自治体が葬儀そのものを執り行うとは限らず、実際の搬送や安置、納棺、式の運営などは、自治体から指定を受けた民間の葬儀社が担当するケースが一般的です。
市民葬で提供される内容は自治体によって異なりますが、主に次のようなものが規格料金に含まれます。
- 棺
- 祭壇
- 骨壺
- 遺影写真
- 霊柩車
- 受付用品
- 焼香用品
- 葬儀の進行や司会
ただし、これらが必ずすべて含まれるわけではありません。反対に、自治体によっては複数の祭壇やプランから選べる場合もあります。
市民葬と一般的な葬儀の違い

市民葬と一般的な葬儀の大きな違いは、自治体が一定の規格や料金を定めているかどうかです。
一般的な葬儀では、葬儀社が独自にプランを作成し、祭壇の大きさや式場、参列人数、サービス内容などに応じて料金を設定します。
一方、市民葬では、棺や祭壇などの基本用品について、あらかじめ規格や料金が決められていることがあります。そのため、葬儀社による料金差が生じにくく、最低限必要なものを選びやすいのが特徴です。
ただし、市民葬の規格料金だけで葬儀に必要な費用がすべて収まるとは限りません。
市民葬を利用できる人
市民葬の利用条件は自治体によって異なりますが、一般的には次のいずれかを満たすことが条件になります。
- 亡くなった方が自治体の住民である
- 葬儀を行う喪主が自治体の住民である
- 自治体内の指定式場や公営斎場を利用する
- 自治体が指定した葬儀社へ依頼する
故人が市外に住んでいても、喪主が市民であれば利用できる自治体もあります。反対に、故人の住所のみが利用条件となる場合もあるため、事前確認が必要です。
また、市民葬制度自体を設けていない自治体もあります。まずは、市役所の市民課、福祉課、地域福祉課などへ問い合わせてみましょう。
市民葬で行える葬儀形式

市民葬という名称は、特定の葬儀形式を表すものではありません。
自治体や利用する葬儀社によっては、一般葬だけでなく、家族葬や一日葬に近い形式で行える場合があります。
一般葬
通夜と告別式を行い、親族だけでなく友人、知人、近隣住民、仕事関係者などにも参列してもらう形式です。
参列者が多くなると、返礼品や飲食費、案内スタッフなどの追加費用が発生しやすくなります。
家族葬
家族や親族、親しい友人など、限られた人で見送る葬儀です。
小規模な式場を利用しやすく、参列者への飲食費や返礼品を抑えやすい一方で、葬儀後に弔問客への個別対応が必要になることもあります。
一日葬
通夜を行わず、告別式と火葬を1日で行う形式です。
通夜にかかる式場費や飲食費を抑えられる可能性があります。ただし、寺院や菩提寺によっては一日葬に対応していない場合があるため、事前に確認しましょう。
市民葬の費用はいくら?
市民葬の料金は全国一律ではありません。
自治体によって、数万円程度の葬祭用品セットを設けている場合もあれば、祭壇、棺、霊柩車などを組み合わせ、十数万円から数十万円程度の規格料金を設定している場合もあります。
ここで注意したいのは、市民葬として表示されている料金が、葬儀費用の総額とは限らないことです。
市民葬の規格料金には、祭壇や棺など一部の項目だけが含まれており、次の費用が別途必要になるケースがあります。
- 遺体の搬送費
- 安置施設の使用料
- ドライアイス代
- 式場使用料
- 火葬料金
- 遺影写真の加工費
- 会葬礼状
- 返礼品
- 通夜料理や精進落とし
- 僧侶へのお布施
- 戒名料
- スタッフの追加料金
- 寝台車や霊柩車の距離超過料金
ホームページに掲載されている市民葬料金だけで判断せず、必ず最終的な支払総額を記載した見積書を出してもらいましょう。
市民葬のメリット

料金や基本内容が分かりやすい
自治体が規格や料金を定めている制度では、基本的なサービス内容を確認しやすくなります。
突然のことで何を選べばよいか分からない場合でも、一定の基準に沿って葬儀を準備できる点は大きなメリットです。
葬儀費用を抑えられる可能性がある
華美な祭壇や多くのオプションを希望しない場合、市民葬を利用することで費用を抑えられる可能性があります。
また、公営斎場や市民料金の火葬場を組み合わせることで、式場費や火葬料の負担を軽減できることもあります。
市民葬のデメリット

利用できる葬儀社が限られる
市民葬は、自治体が指定した葬儀社への依頼が条件となる場合があります。
希望する葬儀社が指定店に含まれていない場合、市民葬として利用できない可能性があります。
プランの自由度が低いことがある
祭壇や棺などの規格が決められているため、一般的な葬儀プランと比べて選択肢が少ない場合があります。
花祭壇にしたい、特別な演出をしたい、故人らしいオリジナル葬を行いたい場合は、市民葬より民間の葬儀プランが向いていることもあります。
追加料金で高くなる可能性がある
基本料金が安く見えても、安置日数、ドライアイス、式場、料理、返礼品などを追加すると、最終的な総額が高くなることがあります。
特に火葬場の空きがなく、安置期間が延びる場合は、安置料やドライアイス代が日数分加算される可能性があります。
自治体によって制度内容が異なる
隣接する市区町村でも、市民葬制度の有無や料金、利用条件が異なります。
以前は制度があったものの、現在は廃止または内容が変更されている可能性もあるため、最新情報を自治体へ確認してください。
市民葬の申し込み方法
市民葬を利用する一般的な流れは次のとおりです。
- 自治体に市民葬制度があるか確認する
- 利用条件と指定葬儀社を確認する
- 指定葬儀社へ「市民葬を利用したい」と伝える
- 希望する葬儀形式や参列人数を伝える
- 市民葬に含まれる項目と追加費用を確認する
- 総額が記載された見積書を受け取る
- 内容に納得したうえで契約する
亡くなった直後は慌ててしまいがちですが、葬儀社へ連絡する際には、最初に市民葬を希望していることを伝えることが重要です。
通常の葬儀プランで契約した後に、市民葬へ変更できない場合もあります。
市民葬を選ぶ前に確認したい7つのポイント
1.表示料金に何が含まれているか
棺、祭壇、骨壺、遺影、霊柩車など、基本料金に含まれる項目を一つずつ確認しましょう。
2.火葬料が含まれているか
市民葬の料金とは別に、火葬場へ支払う火葬料が必要な場合があります。
故人が自治体の住民であれば市民料金を利用できることがありますが、市外料金が適用されると負担が大きくなる可能性があります。
3.式場使用料が含まれているか
祭壇料金と式場使用料は別の費用です。
市民葬の規格料金に祭壇が含まれていても、葬儀を行う会場の使用料が別途必要になることがあります。
4.安置費用は何日分か
火葬まで数日空く場合、安置施設の使用料とドライアイス代が追加されます。
基本プランに含まれる日数と、1日延長した場合の料金を確認してください。
5.参列者にかかる費用はいくらか
返礼品、料理、会葬礼状などは、参列者の人数によって変動します。
予想人数より参列者が増えた場合の追加料金も確認しておくと安心です。
6.不要なオプションが入っていないか
湯灌、メイク、供花、棺の変更、祭壇のグレードアップなどを提案されることがあります。
必要なものだけを選び、不要なオプションは断って問題ありません。
7.総額で比較しているか
市民葬の基本料金と、民間葬儀社のセットプランでは、含まれるサービスが異なります。
基本料金の安さだけでなく、追加費用を含めた総額で比較しましょう。
市民葬が向いている人
市民葬は、次のような人に向いています。
- 葬儀費用をできるだけ抑えたい人
- 華美な祭壇や演出を必要としていない人
- 自治体の規格に沿ったシンプルな葬儀を希望する人
- 指定葬儀社への依頼に抵抗がない人
- 公営斎場を利用したい人
- 葬儀内容よりも費用の分かりやすさを重視する人
市民葬が向いていない可能性がある人
次のような希望がある場合は、市民葬以外のプランも比較することをおすすめします。
- 葬儀社や式場を自由に選びたい
- 花祭壇やオリジナルの演出を希望している
- 多くの参列者を招く予定がある
- ホテルのような設備の整った式場を利用したい
- 故人らしさを重視した葬儀にしたい
- 市民葬の指定内容では希望を満たせない
市民葬以外に費用を抑える方法
家族葬や一日葬を比較する
市民葬よりも、民間葬儀社が提供する小規模な家族葬や一日葬のほうが、希望に合う場合があります。
複数社から同じ条件で見積もりを取り、式場費、火葬料、安置料などを含む総額で比べましょう。
直葬・火葬式を検討する
通夜や告別式を行わず、安置後に火葬を行う方法です。
式場や祭壇を使用しないため、一般葬や家族葬より費用を抑えやすい一方、故人とゆっくりお別れする時間が短くなる可能性があります。
公営斎場を利用する
公営斎場では、故人または申請者が自治体の住民である場合、市民料金が適用されることがあります。
火葬場と式場が同じ敷地内にあれば、霊柩車やマイクロバスの移動費を抑えられる可能性もあります。
葬儀後の供養方法も含めて考える
葬儀後には、お墓への納骨、永代供養、納骨堂、樹木葬、海洋散骨などの費用も発生します。
葬儀費用だけで予算を使い切らず、納骨や供養にかかる費用も含めて資金計画を立てましょう。
お墓を持たない海洋散骨という選択肢
海洋散骨とは、遺骨を細かく粉末化し、海へ散骨する供養方法です。
お墓を購入しないため、墓石代や墓地の使用料、年間管理費などの負担を抑えられる可能性があります。
ただし、遺骨を手元に残せないことに後悔したり、親族から理解を得られなかったりする場合があります。事前に家族や親族と十分に話し合うことが大切です。
よくある質問

市民葬なら必ず安くなりますか?
必ず安くなるとは限りません。
規格料金に含まれる項目が少ない場合、式場費、火葬料、安置料、料理、返礼品などが追加され、民間葬儀社のセットプランより高くなる可能性もあります。
市役所が葬儀をしてくれるのですか?
自治体が直接葬儀を運営するとは限りません。
多くの場合は、自治体が指定した葬儀社が実際の葬儀を担当します。
市民葬でもお坊さんを呼べますか?
僧侶を呼べるケースが一般的ですが、読経料や戒名料などのお布施は、市民葬の規格料金に含まれないことが多いです。
菩提寺がある場合は、市民葬や一日葬を利用してよいか、事前に住職へ相談しましょう。
市民葬でも家族葬にできますか?
自治体や指定葬儀社によって異なります。
少人数で市民葬を利用できる場合もありますが、家族葬専用のプランが用意されていない可能性もあります。
制度がない自治体ではどうすればよいですか?
公営斎場の市民料金、民間葬儀社の家族葬、一日葬、直葬などを比較しましょう。
同じ条件を伝えて複数社から見積もりを取ることで、費用とサービス内容を判断しやすくなります。
まとめ|市民葬は追加費用を含む総額で判断しよう
市民葬は、自治体が定めた規格や料金を利用して葬儀を行える制度です。
葬儀費用を抑えられる可能性があり、基本内容が分かりやすい点がメリットですが、制度の有無、利用条件、料金、指定葬儀社などは自治体によって異なります。
また、市民葬の表示料金には、式場使用料、火葬料、安置料、料理、返礼品、お布施などが含まれていないことがあります。
突然の葬儀で急いでいる場合でも、可能であれば複数社から見積もりを取り、不要な追加サービスが含まれていないか確認することが大切です。
市民葬という名称だけで判断せず、家族の希望や参列人数、葬儀後の供養方法まで考えたうえで、納得できる葬儀を選びましょう。


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